「私には教養がないのよ」

先日、授業で「中国母亲」というドキュメンタリー映像を見た。

ちなみに、中国母亲で検索すると、おそらくテレビドラマが出てくるが、私が見ているのは、ドキュメンタリータッチの映像なので、お気をつけあれ。

 

この映像は、北京郊外で暮らすおばあさんとおじいさんが、北京中心部で暮らす息子夫婦や孫と自分の生活の違い、考え方の違いを話し、それを記録するというスタンスである。

 

最も長くカメラが密着していたのは、そのおばあさんであった。

私にとって不可解であったのは、そのおばあさんは、何か息子夫婦の生活について質問されると、しきりに「私は、教養がないから(没文化)と返答していたことであった。

 

彼女自身の生年をメモしそこねてしまったが、一人目の子供(息子)を1969年に生んだ。

つまり、文化大革命(1966~)の真っ最中である。

彼女曰く、当然のように恋愛結婚ではなく、当時1966年は、「愛情感情って何だろう」というような、自由意思に基づく婚姻は尊重されない雰囲気だったという。

 

おばあさんは、小学校四年生までしか学校教育を受けておらず、それ以降は家事を手伝っていた。

共産党には入党しなかったものの、結婚および出産後は共産党の地区婦女代表として地域を取りまとめていたという。このときの思い出は、楽しそうに語っていた。

 

彼女は、息子を大学まで進学させ、その息子は大学時代に出会った女性と結婚し、北京の都市部で暮らしている。

 

彼女の考え方として、「国家のすることは間違っていないだろうし、自分には教養がないので、教養のある息子夫婦や孫が正しく、私が生き方に干渉することはできない」というものが中心にあった。

 

文化大革命という反知性主義の気運に乗せられた革命を経験し、現在では、孫に「いい大学に入り、いい会社に入って、国家に役立つ人物になること」を求める彼女の態度は、いかにも腑に落ちるようで腑に落ちないのである。

 

 

納得しにくいことを納得しないままずっと考えてもう3日目だ。